胡麻豆腐

今回は胡麻豆腐についてです。

胡麻豆腐はいつから作られるようになったか。
諸説色々とありますが
私が以前調べた範囲では和漢精進料理抄(1697)で
『麻豆腐(もとうふ)』とあるのが最も古い記述でした。
麻豆腐とは、隠元禅師が普茶料理の一品として中国より伝えたと
普茶料理抄(1772)に記述があるので、隠元禅師が伝えた説が有力かと考えております。
特にそう思う根拠の一つに、
材料の本葛が葛の根から本格的に作られるようになったのが約400年前だからです。

また、高野山のお土産として胡麻豆腐が知られるようになったのは
高野豆腐が作られなくなった昭和30年代、
3代目義次が、町の方々と何か代わりにお土産となるものはないか?
と話し合って売り出すようになってからです。

さて胡麻豆腐の作り方ですが
胡麻をよく擦り水と葛で丁寧に練りながら煮込み
型に入れ冷まします。

これは麻豆腐として伝わってきた方法で、
大凡この通りで作られておりますが、高野山では少し違います。

ご存知の方も多いかと思いますがお山では胡麻の皮を剥き、
白い芯の部分を使って製造します。
この芯の部分を加水しながら挽き、絞り汁を作り、葛を丁寧に溶かして
鍋で加熱後、型に入れ冷まします。

胡麻の皮を剥くことにより、出来上がりが白く
そして油分が少なくなりますのであっさりとした胡麻豆腐となります。

高野山ではなぜこのような製法になったかは、勉強不足でわかりませんので
今後の課題なのですが、よく似た製法が「新撰豆腐料理」(明治22年)に
載っています。(但し、葛ではなく餅米を使います)

最後に、当店は吉野本葛を使用しております。
(株式会社黒川本家様の随一本葛を使用)
葛=本葛と思われがちですが、実際は違います。
本葛は葛デンプンのみで、成分表示が「葛」もしくは「葛デンプン」
一方葛は葛デンプンと甘薯デンプン(さつま芋)を混合したものです。
割合の多い方からの表示となりますので
「葛デンプン、甘薯デンプン」または「甘薯デンプン、葛デンプン」
と表示されます。
価格も全く違いますので、原材料を確認してみて下さい。